◆マインドフルネス  ~自分らしくを骨格から響きまで

 

 近年、俳優のためのボイスワークは、表現の変化と共にエクササイズ全体が大きく変化しました。理由はいろいろありますが、もう強い声や大きな声が舞台で求められなくなったことは大きな要因でしょう。また、どんな状況下でも、その人らしさが求められるのは、まさに、マインドフルネスです。

 身体の土台となる骨格から、心地のよい心身を知識とイメージで整えていきます。心身が居心地よく収まっていると想像してみましょう。こんな表現はおかしいかもしれませんが、主体的に体験している自分を客観的に視る自分を併せ持つこと。これは表現者にはなくてはならない有り様ですが、身体を感知する際、働いてほしい感覚です。骨格から調整し、緊張のない響く身体を目指します。

 身体の響きは、声の音色に重要な要素となります。身体を弛緩させて響きをつくり、表層筋を緩めて外へ広げていく共鳴のエクササイズは時間をかけて行います。

 


◆オプティマルなボイスワーク  ~例えば、吐き切らない胸腹式呼吸法

 

 オプティマルとは、「最適な」などの意味に訳されますが、ボイスワークにおいて最適な方法とは、必要な緊張を残して、不必要な緊張を除くことです。私はよくこれを「無理しない、無駄しない」と言っています。具体的なエクササイズでは、必要な機能を十分に使い、最小限のエネルギーで最大の効果を引き出すという意味で使われていました。

 このボイスワークは、姿勢から始まり、呼吸、共鳴、音域、調音へと進んでいきますが、この中でもっとも時間をかけるのが、呼吸のエクササイズです。呼吸法は、胸式呼吸で使う肋骨の動きも有効に使いながら、横隔膜を動かす腹式呼吸により安定した呼気が声帯へ送れるよう「胸腹式呼吸法」を行っています。

 前後左右上下と6方向に動く胸郭を有効に使いながら、絞り切らない呼吸をします。矛盾しているようですが、絞るように吐き切らないことや、逆に吸った呼気を肺に貯めておかないことが大切な呼吸法です。